身体測定1
翌朝、僕は8時20分頃教室に入った。初めて見るクラスメートたちの顔、さすがに名門校だからか、皆それとなく上品な感じがする。教室の広さ自体は以前の学校と変わらない気がするけど、生徒の数が3分の2以下なので広く感じる。
黒板に貼られている座席表を見ると、出席番号順に席が指定されている。僕は窓際の列の後ろから2番目の席に腰を降ろした。後ろには南さんが座るはずだ。一応新しく転入してきた身分なので、大人しく待つことにする。特に話し掛けてくる者もいない。
以前の学校であれば、ホームルームが始まる前はもう少しざわついていた気もするけど、比較的この教室は静かだった。有名高校へ何人も進むような名門校だ。教育が行き届いているのか、あるいは皆真面目なのかもしれない。
しかし、南さんが教室に入ってくると、少し雰囲気が変わった。一瞬教室がざわめいた後、ひそひそと話を始める者も居た。今年から男女共学になったらしいから、教室に女子が居るのが珍しいのかもしれない。あるいは、南さんが予想外に可愛かったので驚いたのかもしれない。
しかし、そのざわめきも西川先生が現れるや、一瞬にして静まった。
「おはようございます」
「おはようございます」
西川先生の挨拶に対して、声を揃えておはようございますと言い、礼をする。僕もとりあえず周りに合わせて礼をした。
「今日は、まず保健室で身体測定をします。それから体育館で第一回のスポーツテストを行います」
今日のスケジュールについての話が始まる。昨日、藤沢先生が言っていたことを思い出す。どうやらスポーツテストは複数日に分けて行われるらしい。きっと今日は楽な種目だけやるのだろう。ただ、身体測定については聞いてなかったなと思った。
「服を脱いだら、出席番号順に2列に並んで保健室に移動すること。保健室では矢野先生と藤沢先生の言うことをよく聞くように。いいな」
はい、と皆返事をした。僕も一応返事はしたが、どうすればいいのかわからず周りを見回した。皆立ち上がって上着を脱ぎ始めている。前の学校では、身体測定は体操服で行っていたが、この学校は下着でやるのかもしれない。まあ、正直下着でやることにあまり意味は感じなかったが、郷に入っては郷に従えだ。立ち上がって上着のボタンを外した。
こういう時は、出席番号1番のやつが動き出さなきゃ始まらない。僕は周囲の様子を窺いながら、ワイシャツのボタンを外していった。と、そこでふと気が付いた。南さんはどうするんだろう。
視界に入っているのが男子ばかりだったので忘れていたが、このクラスには1人女子が居るんだった。そうなると下着で身体測定はまずい気がする。というより、彼女も一緒にやるのだろうか。下着でやるというのは僕が早とちりしただけで、体操服でやるのかなと思った矢先、信じられない光景が飛び込んできた。
なんと、周りの男子がパンツ一枚になったかと思ったら、そのパンツも脱いでしまったのだ。僕は、他人のモノがどうだということよりも、教室に全裸の生徒が居るという状況に面食らってしまった。
「あ、北野、南には言ってなかったな。皆と同じように服を脱ぐように・・・あっと」
そこまで言って西川先生も気付いたらしい。今名前を呼んだうちの1人が女子であることに。教室の空気が張り詰めたように、シンと静まり返る。皆同じ事を期待しているのだ。名門校の生徒といえど、やはり男子の考えることは一緒だった。少し考えた後、先生が口を開いた。
「南は、とりあえず下着で行くように」
一瞬教室内がざわめく。期待は外れたが、それでも充分に楽しみな結果が出たという感じだ。これほど可愛い子の生の下着姿が拝めるだけでも、飢えた元男子校の生徒にとってはすごいことに違いなかった。もちろん、僕にとっても。
それにしても、男女一緒に移動というのもそうだけど、全裸というのは衝撃だった。女子は下着姿だが、それでもこれまでの僕の常識からは考えられない。今までは男女別で、女子が測定している間、男子は教室で自習だった。よくこれで今まで苦情が出なかったものだ。
そこまで考えて、はたと思い当たった。よく考えれば、ほんの何週間か前までここは男子校だったのだ。男子だけなら裸でもまあ問題はないかもしれない。それでも都内の学校じゃ考えられないけど、ここはまだ田舎だし、昔から伝統的にそうやってきたのかもしれない。
とはいえ、南さんにとっては災難だろう。いきなりクラスの男子に下着姿を晒すことになるのだから。全裸よりはマシかもしれないが、恥ずかしいことに変わりはない。
一方の僕も、全裸になるのは恥ずかしかったけど、皆がどんどん脱いでいく中で取り残されるのもいやだったので、えいっと気合を入れてパンツを脱いだ。後ろの席に南さんが居るのはわかっていたが、周りも裸の男子だらけなのだ。赤信号、みんなで渡れば恐くない、だ。
いつの間にか廊下に列ができていた。西川先生が出席番号順に並んで移動すると言っていたのを思い出した。前を隠しながら、ちらりと南さんの方を見る。なんとかブラウスまでは脱いだみたいだったけど、彼女は、ブラジャーに覆われた胸を両手で隠したままの姿勢で固まっていた。
こういうのは後になればなるほど恥ずかしいということを僕は知っていた。だから、さっさと列の最後尾に並んだ。掲示板の「学校だより」と題されたプリントにある「風紀を守ろう」という文字に思わず吹き出しそうになる。これだけの人数が廊下でチン○をブラブラさせといて、風紀もクソもないもんだ。
「はい、きをつけ。隠すな、誰も見やしない」
先生の声にくすくすという笑いが起きた。が、すぐにそれはヒソヒソという声に変わった。明らかに周りの雰囲気が変わったことに気が付いた僕は、教室の中でさっきと変わらない状態で佇んでいる南さんに気付いた。
白い肌が今はなんだか青ざめているように見える。男子は既に全員が廊下に整列している。必然、南さんは注目の的になっていた。
「南、みんな待ってるんだから早くしなさい」
昨日のいいお兄ちゃんという感じはなかった。教師という雰囲気を感じる。僕が西川先生の立場だったら、みんな全裸なんだから例外は認めないって理由で南さんも全裸にしただろう。そういう意味では、まだ西川先生は良心的なのかもしれない。
南さんは、クラスの男子全員───といっても女子は彼女だけだが───が自分に注目していることに当然気が付いているんだろう。ブラジャーに覆われた胸を左手で隠しながら、何とかスカートのホックを外そうとしていた。どうせブラジャーで隠してるんだから両手を使えばいいのに、なんていうのは男子の発想で、女子は下着を見せるのも恥ずかしいんだろうな。
ようやくスカートのホックが外れたらしい。膝を曲げてスカートが落ちるのを防ぐと、彼女はしゃがみ込んでパンティとブラジャーを隠しながら、器用にスカートを足首まで持っていった。そしてソロリと右足を抜くと、同じようにして左足を抜く。教室の後ろの戸が開いているので、僕からはぴったりと閉じ合わせた太腿の間にある白い股間が少し見えていた。
やっとのことで下着姿になった南さんは、背中を丸めて左手を胸に、右手を股間に添えるようにして歩き始めた。屈んだような姿勢のせいで、2つの膨らみが谷間の暗がりを作り出していた。
ガン見するのは何となく恥ずかしかったので、僕はちらちらと視線を送った。初めて見る南さんの肌は白磁のような美しさだった。南さんは下着が見えないように頑張っていたけど、横に並ぶ時、剥き出しの背中と白いパンティに覆われたお尻が見えた。
「きをつけ!隠すな。南、恥ずかしいのはお前だけじゃないんだぞ」
南さんの慌てたような返事が聞こえた。やっぱり彼女は真面目なんだなと思った。