妄想

翌日、学校での挨拶を済ませた僕は、用事があるという母親より一足早く帰宅した。自分の部屋に入ると、制服を脱いでハンガーに掛け、部屋着に着替える。そして、すぐに穿いたばかりのズボンを降ろした。

(さっき電車の中でウチの生徒を見たせいかな)

さすがに今日はラッシュには遭わなかったが、帰りの電車で部活帰りと思われる女子生徒を見掛けた。よほど疲れたのか、その子は席に座ってウトウトしていた。車両の端っこの席にそんな子を見つけたもんだから、ついつい僕も自分を押さえきれなくてその子の隣に座ってしまった。他に空いている席は沢山あったにもかかわらずだ。

さすがに白昼堂々触ったりする度胸はないけど、身体を密着させて、しなだれかかってくる身体の心地よい重みと柔らかさを堪能した。こっちも眠ったふりをして少し手で触ってみたけど、太腿や脇腹に触れるのが精一杯だった。

そんな状態が最寄の駅まで続いたもんだから、我慢は限界に達していた。ギンギンになった息子をポケットに入れた手で押さえながら、何とかここまで帰ってきたのだ。

こんな時、僕が妄想するネタはいつも決まっていた。通学電車でのあの出来事だ。

いつだったかハッキリとは覚えていないけど、体育祭よりは後だったはずだ。その日の朝もサラリーマンさながらに満員電車に揺られながら、学校へと向かっていた。私鉄との接続がある駅で大勢が乗り降りし、車内はすし詰め状態。そんな中、ふっといい香りがして僕は車内広告から目の前の乗客に視線を移した。

僕より幾分背が低く、艶のある黒髪と白い肌、そして紺の制服。それがウチの学校の女子生徒であることはすぐに解った。それに、女性としての身だしなみに気を遣っていることも。とはいえ、知り合いでは無さそうだ。同じ学校の生徒だからといって、こんなところでいきなり話し掛けたらただの変な人になってしまう。僕は黙ってその子の香り、そしてさりげない程度に身体の感触を楽しむことにした。

と、突然電車が急停車する。ドドッという音とともに、皆がバランスを崩して将棋倒しのようになる。隣の女性がバッグを落とす。僕も手に持っていたカバンを落としてしまった。沢山の大人たちに押し潰されながら、何とかカバンを拾う。もちろん、その子のお尻に鼻先を近づけることも忘れない。周りの大人たちも何とか元の姿勢に戻ってとりあえず車内は平静を取り戻した。

将棋倒しの延長で、僕は彼女と密着してしまった。右手の甲に感じる柔らかな感触が、前にいるその子のお尻だということにはすぐに気付いた。と、そのお尻が割れ目を僕の手に擦りつけるようにクッと動いた。何が起きたのかすぐには解らなかった。自分から見知らぬ男の手にお尻を擦りつける中学生なんて聞いた事もなかった。

どこかの駅で列車の非常停止ボタンが押されたという車内放送が流れる。頭の片隅でそれを理解した僕の手に、再びお尻が押し付けられた。その感触は、制服の硬い生地とは明らかに違った。不思議に思って下を見た僕は、目を丸くした。

彼女のスカートの裾が、僕の隣に居る女性のバッグに引っ掛かっていた。必然、スカートは捲れている。カバンを持つ僕の手は、スカート越しではなくパンティ越しに彼女のお尻に触れていたのだ。けれど、彼女はそれに気付いていないみたいだった。これだけ混んでいると、他の乗客も気付いていないだろう。

捲れあがったスカートの惨状を眺めていた僕の目に、彼女の不自然な動きが飛び込んできた。一瞬ビクリとした後、身体をよじるような動き。僕は直感した。痴漢だ───

彼女の前にいたのは、強面の若い男だった。よく見えなかったが、その男の肩が不自然に前に出ている。彼女の身体を触っているのだ。彼女は、身体をよじってなんとか男の手から逃れようとしているみたいだった。

ここで彼女を助けるという選択肢もあったかもしれない。けれど、僕にはできなかった。この状態なら、多少僕がお尻に触ったって大丈夫だろう。下着越しとはいえ、女子のお尻を触る機会なんて滅多にない。満員電車の中で面倒を起こしたくないということよりも、彼女のお尻に触れるチャンスを逃したくなかったというのが本当のところだった。彼女には気の毒だけど───僕は誘惑に負けた。

少しして電車が動き出した。発車時の揺れに合わせるかのように彼女が身をよじる。再びお尻が押し付けられた。前にいる男の手から逃れるのに一生懸命なのか、僕が手をくるりと回して指の腹をお尻に向けても、相変わらず押し付けてくる。

再び電車が停まる。少ししてまた動き出す。しばらくそんな状態が続くと、どこからか溜息が聞こえた。停車、発車は、思ったよりも揺れる。僕は、周りの乗客の体重を借りて彼女のお尻を触った。が、しばらくして信じられないことが起きた。

大きな揺れと同時に指に何かが掛かったような感覚。彼女が肩をすくめ、腰を折るようにしてお尻を押し付けてきた。というより、彼女が腰を引いた拍子に僕の指にお尻が押し付けられているのだ。その感触は今までと違った。下着じゃない。状況を理解するのにしばらくかかった。

彼女は俯いたまま時折ぴくりと動く程度で、すっかり大人しくなっていた。サラサラとした黒髪の間からのぞく耳が真っ赤に染まっていた。電車の揺れに合わせて手を動かすと、何かピンと張った紐のような感触がある。彼女はパンティをずらされていた。僕が指に感じたのは、彼女の脚の間で張り詰めたパンティと、剥き出しにされたお尻そのものの感触だった。

(アソコを触られてるんだ)

それから学校の最寄駅に着くまでのことを思い浮かべながら、僕は妄想に耽った。満員電車の中で痴漢されて耳まで真っ赤になった女子を見ながら、彼女の生尻を味わう。さすがに指をこじ入れる勇気はなかったけど、電車が揺れる度、彼女が動く度に指に感じる、生の割れ目の感触だけで充分だった。

彼女が南綾乃だとわかったのは、電車を降りて学校へ歩いていく道の途中だった。学年一、あるいは学校一かもしれない、こんな可愛い子が痴漢されている現場を目の当たりにした。さらには、生のお尻に触ったのだ。それからというもの、僕は毎日彼女のことを妄想して抜くようになった。

満員電車の中で身体を触られ、声を出すこともできずに耳を真っ赤にして耐えていた彼女。あの時、痴漢は彼女のアソコを触っていたに違いない。指を中に入れられたのだろうか。それとも割れ目に沿って指を動かされたのだろうか。あるいは恥毛とともにシャリシャリと恥丘を撫でられたのか。はたまた手の平全体で擦られたのか───僕の妄想は尽きなかった。

見知らぬ男に秘所を嬲られながら必死に耐える南さん。彼女が味わった恥辱を想像しながら、そのお尻の感触を思い出す。せわしなく動く右手。突如限界に達し、ほとばしるものをあらかじめ準備していたティッシュで受け止める。

ひとしきり欲望を吐き出した後、丸めたティッシュを持って階下に降りる。そして、流しの横にある大きなゴミ袋の中にそれを隠すように押し込んだ。