居残り

次の日の朝、僕たちは相変わらず黙りこくって朝食をとった。昨夜、麻美の身体に抱きついたまま、僕はいつの間にか眠ってしまったらしかった。目が覚めた時には、すでに麻美と絵美ちゃんは朝食の準備に行ってしまっていた。朝食後に住職さんの話を聞けば、今年のひなさき様も終わってしまう。僕は、昨夜もっと麻美の身体を味わっておくんだったと後悔した。

白いご飯に味噌汁と漬物という朝食を食べながら、上目遣いに麻美の方を見る。麻美も絵美ちゃんも視線を御椀の中に落としたまま、顔を上げずに黙々とご飯を食べていた。もしかしたら昨日の今日でご飯も食べたくなかったかもしれないけど、食べ物を粗末にすることは許されなかったんだ。そんな時でも2人の顔は綺麗で、思わず見とれてしまった僕は、きっとだらしない顔をしていたに違いない。

朝食の片付けが終わると、女子が寝床の片付けをする。僕ら男子は、相変わらず何もしなくて良かった。僕らは起きた時と同じ格好で、みんなして縁側に腰掛けていた。女子も服を着ているから、別に片付けの様子を見ようとは思わなかった。片付けが終われば、いよいよひなさき様の終わりも間近になる。

「みなさん、こちらに集まって座りましょう」

住職さんの声で、僕らは部屋の中に集まった。床の間を背にして立つ住職さんの前に、みんな思い思いに座る。でも、やっぱり男子と女子は自然に別れて座っていた。

「みなさんお疲れさまでした。ひなさき様の行事も、もうすぐ終わりです」

そう言って住職さんが話を始めた。僕ら、いや、少なくとも僕は住職さんの話なんて聞いていなかった。昨日から今日に掛けての出来事を思い出しながら、やっぱり麻美の身体をもっと味わっておくんだったと考えていた。今座っている位置から麻美と絵美ちゃんの様子は見えない。なんだか無性に2人の様子が知りたかったけど、キョロキョロするのも気が引けたのでじっとしていた。住職さんの話なんかそっちのけで、僕は麻美と絵美ちゃんの事ばかり考えていた。

「これで今年のひなさき様も終わりです。みなさん気をつけて帰ってください」

住職さんがひなさき様の終わりを告げた。誰からともなく、溜息にも似た長い吐息が漏れる。すぐに動き出す奴は居なくて、男子も女子も、最初に動き出すのがはばかれるかのようにじっとしていた。でも、いつまでもそうしてるわけにもいかないので、ちらりと麻美と絵美ちゃんの様子を窺ってから、僕は立ち上がろうとした。その時だった。

「川崎くんと七瀬さん・・・麻美さんと絵美さんは残ってください」

一瞬周囲がざわめいた。僕は住職さんの顔を見た。きっと七瀬姉妹もそうしていただろうけど、僕は何故か2人の方を見ることができなかった。住職さんはそれ以上何も言わなかった。他の男子と女子は、何故僕らが残されるのか不思議そうにしていたけど、何も言わずに1人、また1人と部屋を出て行った。

しばらくして、部屋には僕と麻美と絵美ちゃん、そして住職さんの4人だけが残された。僕は元々座っていた場所から一歩も動かずに、じっと住職さんが口を開くのを待っていた。これまでのひなさき様で、住職さんの話の後で誰かが残されたという記憶は無かった。僕は、昨日の洗い場での出来事といい、最後のひなさき様は初めて経験することが多いな、なんて考えていた。それと同時に、淡い期待を抱いていたんだ。

住職さんは、七瀬姉妹にもっと前に来るように言った。畳と着物が擦れる音がして、麻美が僕の隣に、その向こうに絵美ちゃんが座った。僕ら3人が集まったのを確認してから、住職さんが口を開いた。

「昨日、七瀬絵美さんの身体に洗い残しがあったのは覚えていますね?あの後、麻美さんの身体も見てみましたが、2人とも少し洗い方が足りなかったようです」

住職さんはそこまで言って一旦喋るのを止めると、麻美と絵美ちゃんを替わりばんこに見た。麻美と絵美ちゃんは、住職さんと目を合わせないようにしながら、首から上だけでペコペコとお辞儀をしていた。「申し訳ありません」という囁くような声が聞こえた。

「過ぎた事をどうこう言っても仕方ありません。ただ、川崎くんが多くの不浄を引き受けてしまった可能性がありますから、そこはきちんと責任を取ってもらいます」

七瀬姉妹の身体の洗い方が足りなかった。それはつまり、多くの不浄を持っているということだ。その2人の不浄を引き受けた僕は、他の男子に比べて、より多くの不浄を引き受けた可能性がある───。住職さんはそう言いたいのだろうと、僕は勝手に思った。

「引き受け過ぎた不浄を元に戻す必要があります。あなた方に残ってもらったのは、今からその儀式を行うためです」

それから、僕と七瀬姉妹は、住職さんに連れられてお風呂に行った。そこはきれいに整理整頓されていて、昨夜、身体を洗ってもらった面影は微塵も無かった。

「まず、みなさん服を脱いでください」

住職さんの声で、僕は思わず七瀬姉妹の方を見た。麻美は驚いた表情で住職さんを見上げ、絵美ちゃんの表情も見る間に曇ってゆく。住職さんは事も無げに僕らを見て、早く脱ぎなさいという無言のプレッシャーを掛けてきた。

僕は、腰紐をするりと解いて、肌襦袢を脱いだ。元々下には何も着けていない。肩からストンと肌襦袢が落ちると、僕は真っ裸になった。裸になるのは恥ずかしかったけど、それよりもこれから行われることへの期待の方がはるかに大きかった。七瀬姉妹はまだ決心がつかないのか、腰紐に手を掛けてじっとしている。けれど、住職さんに再び服を脱ぐように言われて、観念したように腰紐を解いた。

前をはだけた状態で、袖から腕を抜く。片手で胸を隠した状態で、器用に肌襦袢を脱ぐ。2人とも足を揃えてしゃがみ込んで、肌襦袢をたたんだ。なんだか、わざと時間を掛けてたたんでいるように僕には思えた。

右手を胸に、そして左手をあそこに添えている。麻美の身体は、昨日の事が嘘だったかのように、透き通るような白肌を晒していた。絵美ちゃんは、相変わらず麻美の影に隠れるようにしていたけど、長い黒髪、そして麻美と同じ透き通るような白い肌は、村一番の美人姉妹という呼び声に恥じないものだった。

「川崎くん、ここに座ってください」

住職さんに言われて、僕は湯船の縁に腰掛けた。両手で胸と股間を隠して、縮こまるようにしている七瀬姉妹にも、住職さんの声が飛んだ。

「2人ともこっちへ来てください」

住職さんに言われて、2人ともおずおずと傍に歩いてきた。麻美も絵美ちゃんも、細い腕じゃ胸全体を隠すことはできなくて、膨らみの形が見えていた。指をぴったりくっつけて、必死にあそこを隠していたけど、腰周りの丸いラインと、柔らかそうなお腹にあるお臍のアクセントが、とてもいやらしかった。

「七瀬麻美さん、ここに座ってください」

住職さんの指は、湯船の中を指していた。麻美は、住職さんの顔と、住職さんの指が示す先をかわるがわる見てから、僕と目を合わせないようにして湯船に入った。湯船にお湯は張られていない。住職さんが何を考えているのか、すぐにはわからなかった。

「川崎くん、もう少し深く座ってください」

僕は湯船の縁にちょこんと腰掛けていたけど、住職さんに言われて座り直した。湯船の縁に太腿をのせるようにして、お尻を湯船の中に突き出すくらいに深く座る。バランスを崩さないように、少し前屈みになった。

「七瀬麻美さん、川崎くんのお尻の穴を舐めなさい」

住職さんの口調が、それまでとは違う命令口調になった。心なしか語気も強い。後ろから引きつったような声が聞こえたけど、僕は振り返らなかった。住職さんの言葉には僕もびっくりしたけど、麻美はもっと驚いたみたいだった。姉と同じように驚きの表情を浮かべている絵美ちゃんを見ながら、僕はお尻の穴が引き締まるような緊張を感じた。