証明1
「今から俺がする質問に正直に答えてくれたら、今日は帰してあげてもいいよ」
田原の口から発せられた意外な言葉に由紀が驚きの表情を浮かべる。薄暗い室内で由紀にはわからなかったが、他の不良たちの顔には笑みが浮かんでいた。
これから自分の身に起こる出来事を具体的に想像していたわけではない。だが、強姦やレイプといった言葉が全く浮かばなかったといえば嘘になる。目を背けてはいたが、そうなるのではないかという恐怖は常にあった。だからこそ田原の言葉は意外だった。拍子抜けといってもいいかもしれない。
「その代わり・・・正直に答えなかったら、さっき言った穴全部に入れるから」
さっき言った穴、それはつまり肛門、膣、そして尿道である。この時点でほぼ由紀に選択の余地は無い。一体何を要求されるのか、由紀はじっと田原が口を開くのを待った。
「こっちに来てくれる?」
田原は、そう言って歩き出した。由紀の視線が自然と田原を追いかける。田原は、そのまま歩を進めると、ちょうど入り口の反対側にある倉庫の戸に手を掛けた。
木製の戸がスライドする重い音がした。田原は、由紀に向かって手招きをすると、倉庫の中にスタスタと足を踏み入れる。由紀は、田原の意図がわからず胸の前で腕を縮こまらせて立っていたが、さっきの田原の言葉を思い出し慌てて倉庫の方に向かった。
歩きながら、不良たちの視線から逃れるように胸と股間を手で隠す。だが、お尻までは隠すことができない。本人にそんなつもりは無くても、由紀の歩みと共に双丘が誘うように形を変える。キメ細かく真っ白な肌に覆われた丸い膨らみと狭間の暗がりに絡みつくいやらしい視線。由紀は、逃げるように倉庫の入り口をくぐった。
シャッという音を立てて小さな窓を遮光カーテンが覆った。由紀の後を追うように倉庫に入ってきた不良たちの足音が聞こえる。足音が止むと、すぐに入り口の戸が閉められた。同時にパチンと音がして、倉庫内に明りが灯る。入り口を閉められたことに加え、後ろに不良たちが居ることで由紀は強い圧迫感を感じた。
「そこに乗って」
田原は、傍らに積み重ねられたマットを指差した。由紀は、ちらりとマットを一瞥する。何の事は無い、体育の授業で使うごく普通のマットに見える。ただ、何故そこに乗れと言われているのか由紀にはわからない。不良たちに言われるままマットに乗ることに不安を感じたが、どうすることもできず結局乗った。
「はい、ちょっとごめんねー」
「きゃぁ!」
身体の向きを変えようとした瞬間、急に目の前に手が出てきたため、由紀はびっくりして声をあげた。
「静かにしな」
背後から男の声がしたかと思うと、由紀はあっという間に布のようなもので目隠しをされてしまった。不良たちの誰に目隠しをされたのかすら由紀にはわからない。
「おっと、それを外しちゃダメだよ」
思わず目隠しに手を伸ばそうとするが、手を触れる前に止められてしまった。仕方なくそのまま身体を今上って来た方に向ける。と、視界を塞がれた由紀の耳に複数の足音が聞こえた。不良たちが集まってきたのだ。一体これからどうなるのだろう。周りの様子が見えない不安と怯えから、急に心臓が鼓動を早める。
「さっき言ったとおりだけど、今から言う質問に正直に答えてね。そしたら帰してあげるから」
「・・・」
「返事は?」
「は、はい」
「嘘ついたら、全部の穴に入れるよ?」
「はい・・・」
一つ一つ確認するように田原が質問する。そして、由紀は一つ一つ肯定の返事をしなければならなかった。
「一つ目の質問。目隠ししても、自分のおヘソがどこにあるかわかる?」
「は、はい」
質問の意図は判らなかったが、正直に答える。さすがに目隠しをしていても、自分の身体の部位くらいは判別できる。
「じゃ、おっぱいとかお尻とか、アソコもわかるの?」
普通、自分の身体についてどこに何があるかくらい目隠ししていてもわかる。わざわざそんな場所について訊く必要はないはずだ。不良たちがいやらしい言葉で自分を困らせようとしているのはわかっていた。
「・・・はい」
由紀は肯定の返事をした。恥ずかしいからといって下手に嘘をつくと、何か言われそうで恐かった。
「ふーん・・・もう少し細かいレベルで、お尻の穴とかクリトリスとかもわかるの?」
少し迷ったが、由紀は肯定の返事をした。クリトリスは先日の検査でその場所を知った。男からそういう言葉を言われるだけで恥ずかしく、屈辱的な感じがした。
「ちゃんと正直に答えてるみたいだね。その調子だよ」
微かに笑い声が聞こえた。その調子などと言われても、嬉しくも何ともなかった。
「クリトリスって敏感だから皮を被ってるんでしょ?でも皮は剥くことができる。由紀ちゃんもそうなの?」
「・・・はい」
恥ずかしいが答えるしかない。これも先日の検査で知ったことだった。
「じゃあ、由紀ちゃんのお尻の穴の大きさってどれくらい?」
質問の内容を理解した由紀は、答えに詰まった。恥ずかしいというよりも、そもそもどのくらいの大きさかと訊かれても答えようがなかった。そんな場所、サイズを測ったこともない。由紀が困っていると、別の質問が飛んで来た。
「訊き方を変えるよ。指なら何本くらい入ると思う?」
自分のお尻の穴に指など入れたことはない。とはいえ、答えないと何を言われるか。
「あ・・・1本くらい・・・なら」
入れた経験は無かったが、2本も入れるのは無理な気がした。
「へぇ、可愛い顔してお尻に指入れたことがあるの?」
「そ・・・っ」
再び由紀の耳にクックッと噛み殺したような笑い声が聞こえた。そんなことありません、と言おうとして何とかその言葉を飲み込む。入れたことが無いと言えば、わからないのに答えてしまったことになる。質問自体は「何本くらい入ると思う」という訊き方だったが、不良たちに難癖を付けるきっかけを与えるのは避けたかった。
はいとは言えず、無言でコクリと頷く。
「何でお尻の穴に指を入れたの?」
やはり訊かれた。頷いた時に訊かれるのではないかと思ったが、どうすることもできなかった。何か理由を考えなければ───
「ね、熱が出た時に、お薬を入れたんです」
咄嗟に出てきたのは、子供の頃の僅かな記憶だった。まだ小さい頃の話だし、あの時座薬を入れたのは母親だった。
「一緒に指も入っちゃったってこと?何だよそりゃ」
拍子抜けしたような声だった。しばらくの沈黙の後にされた質問は、お尻とは関係ないものだった。
「ところで由紀ちゃんは処女なの?」
「・・・・・・はい」
しばらく迷ってから由紀は返事をした。正直に答えても、嘘をついてもあまりいい事は無い気がした。それなら、正直な答えを選んだ方がマシだと思ったのだ。
「てことは、お乳も出ないんだ」
一瞬何を訊かれているのかわからなかったが、よく考えるとそんなことは当たり前だ。母乳が出るのは妊娠してからだ。何を訊いているのと思いながらも、はい、と返事をした。
「じゃ、次はちょっと違う質問しようか・・・由紀ちゃん器械体操とサッカーはどっちが得意?」
「器械体操・・・」
器械体操とサッカーと言われれば、そう答えるしかない。サッカーをやったことのある中学生の女子が何人いるだろう。マット運動や跳び箱程度なら、学校の授業でやったことがある。
「じゃあ、側転とかブリッジとか出来るんだ」
「側転は・・・できません」
「できないんだ?恐いとか?」
「はい・・・」
由紀は、自分のことを運動神経がいいとは思っていない。側転や倒立前転といった身体を伸ばして回る種目は恐くて、とても自分に出来るとは思えなかったし、実際できなかった。練習もあまりした記憶がない。
「ちゃんと正直に答えたみたいだね・・・でも一応確認させてもらおうかな」
目隠しをされ、マットの上で身体を縮こまらせていた由紀に向かって田原が言った。
「そこでブリッジしてみてよ」