検査官3

「ねぇ、これってワンポイントなんじゃないの?」

そう言って、相川はパンティの上から由紀の股間に無遠慮に指を突き立てた。

「うくっ」

既に田原の指から逃れようと限界まで爪先立ちになっていた由紀は、自らの敏感な部分で相川の指を受け止める羽目になった。

「ねぇ?」

問い詰めるように言った後、「これのことだよ」と言わんばかりにクニクニと指を動かす。逃げ場を失った柔肉が変形し、コットンの生地が複雑な模様を造った。

「ち、違います」

ついに耐え切れなくなったのか、由紀が相川と田原の手を掴んだ。

「何、この手?これじゃ検査できないんだけど」

由紀のあまりにも弱々しい抵抗に、相川は内心ほくそ笑んだ。もはやクラスメートという意識はない。相川は、由紀を単なる嗜虐対象として見ていた。

相川は、もともと田原にいいところを見せようとしただけだったが、次第に由紀に対する嗜虐欲にその心を奪われつつあった。写真を盾に取られ抵抗できない由紀を嬲り者にしたい───それは彼がクラスメートから嫌われている理由のひとつだが、当の本人は気にしていない。それが彼の生来の性格であり、他人にどう思われようとも、弱い者を虐めることで自身の欲求を満たすことができるのだから。

「ワンポイントじゃないとしたら、何なの?」

「・・・・・・」

「またダンマリ?」

少し前なら長嶺と中村が野次を飛ばす場面だったが、相川に美味しいところを持っていかれて気落ちしたのか、2人は何も言わなかった。

「これ、このスジみたいなヤツだよ」

「・・・!」

相川の指は、コットンの薄布1枚隔てて正確に由紀のスリットを捉えていた。人差し指を鉤型に曲げ、ぷっくりとした大陰唇の合わせ目から何かを掻き出すように動かす。いくらパンティを穿いているとはいえ、女の子の身体で最もデリケートな場所をそんな風にされ、くやしさと恥ずかしさで由紀の顔は朱の色を濃くする。

「仕方ないな・・・ちゃんと調べるから脱いで」

由紀は、ぱっちりとした目を一層大きく見開くと、信じられないという表情で相川を見た。

(ほ、本気なの・・・?)

これまでの流れから、最後はパンティも脱ぐ羽目になるのではないかという思いはあった。だが、同時に「まさかそこまでは」という思いがあったのも確かだ。結局、由紀の儚い望みは、相川の一言で打ち砕かれてしまった。

「それだけは・・・許して下さい」

精一杯の力を振り絞って訴える。だが、相川の答えは素っ気無かった。

「許す?何を?早く脱いで。検査なんだから」

「そんな・・・」

「脱ぎたくないの?じゃあコレが何なのか説明してよ」

相川の指が、再び由紀の大事な場所を捉える。そして無遠慮に前後し始めた。同時に田原がお尻の割れ目に突き立てていた指をグリッと動かした。

「そ、それは・・・ッ!」

思わず息が詰まった。このままでは不良たちの眼前に自分の全てを曝すことになってしまう。何とか、何とかしなければ───

「それは・・・あ、あそこの・・・」

自らの身体の恥ずかしい部分、その俗称が脳裏に浮かび、じぃんと身体が熱くなるのを感じる。

「聞こえないな」

「あ、あそこの・・・割れ目・・・です」

下卑た薄笑いを浮かべる不良たちの前で、緊張の中言葉を選ぶ。たとえ直接性器の俗称を口にすることはなくても、恥ずかしいことに変わりはない。だが、このままでは卑劣な男たちに自分の身体の全てを見られてしまう。それだけは絶対に避けたかった。

「あそこって何?どこのこと?」

女性器の名称を口にすることを避けた由紀だったが、それを見過ごす不良たちではない。言わなくてもわかっているのに、わざわざ訊き直してくる。

「まさかお尻の割れ目?」

「ち、ちがいます」

「じゃあ何の割れ目なの?」

「・・・」

数秒の沈黙が流れる。ふぅ、と溜息が聞こえた直後、パンティのゴムがくいっと引っ張られた。由紀がビクリと身体を震わせる。相川の声が聞こえた。

「ちゃんと説明できないなら、やっぱり脱いで見せてもらうしかないね」

相川が少しずつ手を降ろしていくと、その動きにつられるように白い布が捲れていく。今までコットンの布に覆われて汗ばんでいた肌が外気に触れ、すぅっと冷やされる。真っ赤だった由紀の顔から急速に血の気が引いていく。

「ま、待って」

由紀は、思わず白いコットンの生地を手で押さえた。パンティを降ろしていた手を止め、相川が視線を上げた。

「・・・の・・・割れ目です」

蚊の鳴くような声で由紀が言った。由紀は懸命に声を出したつもりだったが、その声は誰にも聞こえない。一度は不良たちの前で口にした言葉とはいえ、やはり声に出すのは恥ずかしかった。しかし、聞こえていたとしても結果は同じだったかもしれない。

「聞こえないよ」

田原の声がしたと思った途端、お尻の割れ目に突き立てられていた指がスッと抜かれ、お尻の方からパンティがずり降ろされた。

「きゃあっ!」

由紀が悲鳴をあげて必死にパンティを押さえる。反射的に腰を屈めるような姿勢になるが、そうしたところで意味はない。すでに真っ白なお尻は半分程見えてしまっていた。由紀は、ずり降ろされたパンティを引き上げようとしたが、田原は手を離さなかった。

「何やってんの?由紀ちゃんが答えないから、脱いでもらって検査しようとしてるんでしょ?」

突然パンティを引き下げておきながら、田原は「脱いでもらって」と言った。田原の人差し指は、パンティのゴムを引っ掛けると同時に、その背を少し割れ目に入り込ませていた。

「仕方ないな、もう一回チャンスをあげるよ。パンティ脱ぐのは恥ずかしいもんな。けど、まただんまりだったら・・・」

深呼吸するように息を吸うと、口の中がカラカラに乾いていた。このままでは、間違いなくパンティを脱がされてしまう。恥ずかしくても言うしかない。不良たちの前で全てを曝すよりは───

「ちょっと待った。手を離せよ」

由紀は覚悟を決めて口を開こうとしたが、田原の声に遮られた。ずり降ろされそうなパンティをすんでのところで支えている両手を離せというのだ。少しの沈黙が流れた後、由紀が大人しく手を離した。もっとも、不良たちからはそう見えたというだけだったが。

抵抗力が減ったことでお尻側の布がさらに下がり、由紀の白くて丸い柔らかそうなお尻は、中央に走る一筋の谷間を含めてかなりの部分が見えてしまった。

「手は後ろで組んでもらおっか」

由紀が胸を隠すように腕を縮こまらせたのを見て、相川が意地悪く言った。由紀は、少しだけ相川に視線を向けたが、比較的素直に腕を後ろに回した。そして田原の視線からお尻を庇うように手の平を広げた。

「お~い、後ろで手を組むってのはそうじゃないだろ」

すかさず咎められた。今、不良たちは由紀に対して絶対的な権力を持つ立場にいるといってよい。中途半端な抵抗は、不良たちに自分を嬲るための口実を与えるだけだということに由紀は気付いていなかった。

「なあ、お前らもちょっと来てみろよ。後ろで手を組むってのは、こうじゃないよなぁ?」

不意に呼びかけられた長嶺と中村は一瞬きょとんとした表情を見せたが、事態を飲み込むやいなや、床の上を滑るようにして田原の傍までやって来た。よほど慌てたのか、その手には由紀の筆箱が握られている。

「後ろで手を組むっていうのは、こうじゃないよな?」

田原は、先程と同じフレーズを再び繰り返した。そして2人に意味ありげな視線を送る。由紀は、半分以上見えてしまった白いお尻を何とか隠そうと必死に両の手の平を開いている。田原は、それが気に入らない───というよりは、難癖を付けるのに格好の標的である───と言っているのだ。それは2人にもわかった。

「そうッスねぇ、後ろで手を組むっていうのはこうじゃないッスねぇ」

「もっとちゃんと両手でお尻の割れ目を開かないと」

中村は一瞬長嶺の顔を見た。そんな発想は無かったとでも言いたげだ。だが、すぐに長嶺に合わせて話を続ける。

「そうそう。両手でお尻の割れ目を開かないと、後ろで手を組んだとは言えないッスね」

「ほら、ちゃんと両手で開くんだよ」

そう言って由紀の両手をくるりと裏返してお尻に添えさせた。2人の会話は由紀の耳にも届いていたが、何を言っているのかすぐにはわからなかった。後ろで手を組むということと、お尻の割れ目を開くということが結びつかなかったのだ。だが、日本語として正しいかどうかは、ここでは問題ではなかった。

両手をお尻に添えられたことで、お尻の割れ目を開けと言われていることを理解する。だが、何故お尻の割れ目を開かなければならないのか。後ろで手を組むのではなかったのか。そもそも、そんなことをしたら───

理解したからと言ってできるわけがない。4人の男たちに囲まれたまま、由紀は固まってしまった。

「また?じゃあ、あと5秒だけ待ってあげる。それで出来なかったら、教室に写真張り出し決定ね。ごー、よーん・・・」

いくら恥ずかしくても、いくら理不尽でも、写真を盾に要求されてしまうとどうすることもできない。こんなことなら性器の俗称を口にしていた方が良かったと思っても後の祭りである。すでに不良たちの興味の対象は変わってしまったのだ。

「いーち」

由紀は、ぎゅっと目を閉じて震える手に力を込めた。

田原、長嶺、そして中村の目の前に、由紀の恥ずかしい部分がまたひとつ曝された。普段他人の目に決して触れることの無い、ふっくらと丸みを帯び始めた未熟な果実。あまつさえ、その奥に隠された小さな孔までもが───

不良たちは下品に笑い、低俗な言葉を口にした。卑劣な男たちの視線が、谷底の小孔に集中しているであろうことは容易に想像できた。由紀は、あまりの恥ずかしさに頭の中が真っ白になりそうだった。何より、自らの手で白く柔らかい双丘を割り開き、その奥底まで白日の下に曝さなければならないことに心が打ちひしがれた。

「最初から素直にやりゃいいんだよ」

カチャカチャと音をさせながら田原が言った。その音が自分の筆箱を弄っている音だと気付く余裕は由紀には無い。震える手、震える指で不良たちの卑俗な要求に応えるだけで精一杯だった。

「でも、これだけ手間を掛けさせた罰は受けてもらうよ───」