ラブレター7
タンクトップの裾を持った手が、徐々に上に上がる。懸命に腰を引いて、パンティができるだけ見えないように気を付けながら、時間を掛けて脱ぐ。手が上がるにつれてタンクトップの裾が捲れ、背中が露になる。
「ちゃんと真っ直ぐ立たなきゃだめだよ」
田原はそう言って、由紀のお尻を叩こうとする素振りを見せた。由紀はビクリとして、折り曲げていた腰を伸ばす。懸命に股間を隠そうとしていた由紀の思いは、脆くも崩れ去ってしまった。
(もうすぐ・・・見えちゃう)
ブラジャーに自分の手が当たった。パンティとブラジャー、どっちが恥ずかしいかと言われれば、パンティである。だが、ブラジャーを見せるのが恥ずかしくないわけではない。
「あれぇ?どうしたの?」
由紀が胸まで手を上げた状態で固まっていると、一旦離れた田原が、再び由紀の方に向かって一歩足を踏み出した。
「ぬ、脱ぎます」
由紀にとって、田原の脅しはもはや恐怖以外の何者でもなくなっていた。一瞬のためらいを見せた後、ゆっくりと右腕を抜く。抜いた右腕を胸の上に添えてから左腕を抜いた。両腕をタンクトップの中に入れたまま、一生懸命脱ごうとしているかのようにモゾモゾと動く。だが、時間稼ぎにも限界がある。ちらりと横目で田原を見てから、内側からタンクトップの裾を持って手を上に持っていく。白いブラのカップ、少し浅めの谷間、そして肩紐が、タンクトップの陰から現れた。
「お、由紀ちゃん、中学2年生の割には胸があるんじゃない?」
「柔らかそうだなぁ」
「純白のブラジャーってのもそそるねぇ」
不良たちに自分の下着と胸を批評され、耳が熱くなる。早く胸を隠そうと、タンクトップを首から抜く。両手とタンクトップで胸を隠すようにして立った。
「隠しちゃダメって言ったじゃん。手を後ろで組んで」
田原に言われて由紀は、仕方なくおずおずと両腕を後ろに回した。純白のブラジャーが男たちの視線に晒されてしまうが、どうすることもできない。
「ブラジャーも見た目は問題なさそうだねぇ」
「まだわかんないっすよ」
「そうそう。ちゃんと調べないと」
調子付いた不良たちが口々に言った。由紀の下着が校則に則ったものであることは、由紀自身がよく知っている。自分が抵抗できないのをいいことに、好きなように言われてしまうことが、たまらなく悔しかった。
「相川、こっちに来い」
由紀は、これ以上は許して欲しいと懇願するような瞳で田原を見つめる。田原は、そんな由紀の視線を軽く受け流すと、入り口の傍でじっとこちらを見ている相川に向かって言った。相川は、「はい」と返事をすると、少し急ぎ足で田原の傍にやって来た。
「ねぇ由紀ちゃん・・・俺と相川、どっちに検査されるのがいい?」
由紀は、声を発することができなかった。田原にはいやらしさというより何をされるかわからない恐ろしさを感じる。相川は同じクラスの生徒、しかもクラスの嫌われ者だ。今回の出来事で、由紀も相川のことが嫌いになっていた。どちらに検査されるのがいいかなど、選べるわけがなかった。
「選ばないんだったら、こっちで決めちゃうよ」
由紀は、田原の問いに返事をすることも自ら検査官を選ぶこともできずに、純白の下着姿で男たちの前に佇んでいることしかできなかった。
「相川、検査しろ」
由紀と相川が、同時にビクリとした。由紀は下着検査の開始に対して、相川は自らが検査官に任命されたことに対して、不安と驚きの表情を浮かべる。
「わかりました」
今日は由紀が辱められるのを見ているだけだと思っていた相川は、田原の突然の指名に驚いたものの、すぐに平常心を取り戻すと、ゆっくりと由紀の前に進み出た。由紀は、クラスメートを前にしながら、下着を隠すこともできない。
相川は、ゴクリと唾を飲んだ。普段クラスメートとして目にしている後藤由紀が、下着姿で目の前に立っているのだ。しかも、その下着を───いや、むしろその身体を───これから自分が検査する。友達が多いとはいえず、どちらかというと嫌われ者という扱いを受けている相川にとって、これは千載一遇のチャンスと言えた。
由紀の正面に相川が立っている。その視線は、由紀の下着姿を舐めるように動き回っている。無駄だとわかってはいたが、由紀は僅かに首を左右に振った。やめてと懇願するように相川を見つめる。
相川は、優等生で見た目も可愛い由紀の普段目にすることができない姿を目の前にして、胸の高鳴りと共に妙な緊張を覚えた。想像の中でしか知らない女の子の身体、下着だけでなく肌も滑らかに白い由紀の身体は、触れると壊れてしまいそうな気もした。小心者である相川は、このことが教師や他の生徒にバレたらとずっと心配だった。だが、由紀の白い肌を目の当たりにした今は、初めて見る女の子の身体に対する興味の方が大きくなっていた。
「ほら、由紀ちゃん、ちゃんとお願いしな」
「・・・お・・・お願いします」
由紀は、なんとかそれだけを口にした。残念ながら相川が田原たちの言いなりであることは既にわかっていたし、自分の下着姿に注がれる相川の視線が先ほどまでとは全く異なっていることに気づき、由紀は俯くことしかできない。
相川は、ちらりと田原を見る。田原は何も言わずに、少しにやけた顔で頷いた。
「や・・・やめて・・・」
由紀が、怖いものでも見ているかのような表情で相川を見つめ、後ろ手の状態でじりじりと下がろうとする。恐る恐るという感じで、相川の右手が胸元に向かって伸びてくる。それを避けようとしてよじった肩が、由紀の後ろに居る田原に当たった。
「だめだよ、動いちゃぁ」
そう言って田原は由紀の肩を押し返すと、その手からタンクトップを奪い取った。
「相川、ちょっと待ちな。・・・由紀ちゃん、両手で反対側の肘を掴むんだ」
由紀は、田原が自分に向かって喋っていることにすぐに気付くことができず、田原に思い切りお尻を叩かれた。
「あうッ!」
パンティを穿いているにも関わらず、直接肌を叩いたような鋭い音が響いた。
「聞こえなかった?両手で肘を掴むんだよ・・・誰が腕組めっつった!後ろでやるんだよ」
由紀が田原の怒声に怯えながら、何とか後ろに回した手でそれぞれの肘を掴んだ。すると、田原は後ろに回している由紀の手をタンクトップできつく縛ってしまった。田原の手から逃げようと、由紀が身体全体を捻るようにして振り向く。田原はすぐに手を離したが、由紀の両腕の自由は奪われたままだ。由紀がその華奢な両腕に力を込めても、きつく結ばれたタンクトップはビクともしなかった。
田原と由紀のやり取りを見て少しためらった相川だったが、心の奥底から湧き上がってくる、そしてだんだんと大きくなる黒い欲望を抑えることはできない。
「あいっ!」
由紀が声をあげると同時に、その可愛らしい顔を痛みに歪めた。相川は、女の子の身体に初めて触れる緊張と大きく膨らんだ欲望のあまり、力一杯由紀の乳房を掴んでしまったのだ。
「アッハハ、おいおい、もう少し優しくしてやれよ」
「相川ぁ、下着の検査だぞ。おっぱいの検査じゃねえぞ」
「そういやそうだ。おい、相川気をつけろよ」
由紀の身体に直接触れることができる相川に多少の妬みを感じながら、長嶺と中村が言った。田原が自分たちを差し置いて、下着検査をする役に相川を指名したのが面白くないのだ。野次を飛ばしながら田原に視線を送り、指名替えを期待する。
「相川、そうじゃねぇだろ。もっとじっくり、校則違反が無いか下着全体を調べるんだよ。強く握ったりしたら、由紀ちゃんがかわいそうだろ」
男たちがどんな優しい言葉を掛けてくれたとしても、それは本心からではない。何もできない状況で田原にわざとらしい哀れみの言葉を掛けられて、由紀は余計惨めな気持ちになった。
相川は、長嶺と中村から馬鹿にされたような気がしてムッとした。とはいえ、2人に逆らうことはできない。それに、ここで口ごたえしてせっかくのチャンスを逃すのも馬鹿らしい。相川は、とりあえず田原に言われた通り下着の検査をすることにして、由紀を苛めることでその気持ちを解消することにした。
再び、怯える由紀の胸元にゆっくりと手を伸ばす。すると、田原が由紀に近づき、両手でガッチリと由紀の腕を掴んだ。由紀は、いよいよ逃げられなくなった。
「相川ぁ、遠慮すんな。堂々とやってみろ」
田原は単に面白がって言ったのだが、その言葉で相川は吹っ切れた。
「まかせてください」
普段の相川からは想像できない言葉に、3人の不良たちは一様に驚いたような表情をその顔に浮かべた。
(へぇ・・・相川の奴、言うじゃねぇか。どれほどのモンか拝見させてもらうぜ)
こういう状況では、何だかんだでビビッてしまう奴も多い。まして、相川と由紀はクラスメートだと聞いている。田原は、普段とは違う相川の様子に驚きながらも、子分が成長した姿を見せてくれるのではないかという微かな期待を抱いた。
(見てろ・・・うまくやって、お前らより先に俺が田原さんに認めてもらうんだ)
ここに着いてから、田原が由紀にしてきたことは全て見ている。田原の好みに合う形でこの下着検査を進めれば、自分に対する見方も変わるはずだ。上手くやれば、年上の2人を差し置いて、田原に認めて貰えるかもしれない。
(いやらしい検査官になりきってやる───)
それぞれの思惑を胸に、由紀の下着検査が始まった。