健康診断1
身体測定が終わり、今度は健康診断が始まった。男子は肛門を見られ、チン○の皮を剥かれた。女子はいったいどんなことをされるのか、保健室に居る男子全員がドキドキしているに違いなかった。
南さんは、おっぱいとアソコが男子に見えないように両手で隠して、屈むようにして矢野先生のところに移動した。あれ?と僕は思った。何だか違和感がある。
違和感の正体はすぐにわかった。男子が健康診断をやっていた時とは、椅子や机の位置が違う。椅子と机は、2列に並んだ男子のすぐ横まで近づいていたし、その位置関係も変わっていた。
「藤沢先生、お願いします」
保健室に矢野先生の声が響いた。藤沢先生が、ノートを持って矢野先生の傍に移動した。
「記録お願いします。女子は内容が多くって・・・」
「はい、大丈夫ですよ」
そう言って藤沢先生は、男子の列と矢野先生の中間くらいに机を持っていく。途中、ちらっと男子の方を見ると、例の良く通る声で言った。
「縦に10人も並ぶとちょっと狭いわね。いいわ、こっち向いて座りなさい。そうすれば広いでしょ」
そんなに狭い気はしてなかったけれど、南さんが健康診断を受けるところを見るなら、当然座る向きを変えた方がいい。ちらちらと視線を送ることしかできなかった男子に、堂々と南さんの健康診断を見る口実を与えてくれたのだ。男子は全員、「あ~、だりぃ」みたいな空気を出しながら身体の向きを変えた。多分、そんな風に思っている奴は1人も居なかったはずなのに。
「はい、座って。女子は項目が少し多いから、藤沢先生にも手伝っていただくわね」
南さんに説明するように矢野先生が言った。丸い椅子に座って胸を隠している南さんが、僅かに頷いた。
「はい、手を上げてね。息を吸って~」
聴診のために胸を隠していた手を退けられると、綺麗な御椀型の乳房がプルンと揺れた。
「むこう向いて~」
南さんは、男子が居る方とは逆方向に半回転すると、すぐに胸を隠した。聴診は、特にこれといって変わったところもなく普通に終わった。まあ男子の前で裸で診察されるんだから、普通と言っても恥ずかしいことに違いはないだろうけど。
「はい、いいでしょう」
再び男子が居る方とは逆方向に半回転して矢野先生の方を向く。
「じゃあ、今から訊く内容について正直に答えてね」
「はい」
矢野先生はそう前置きすると、南さんの返事を待ってから質問を始めた。
「おっぱいが膨らみ始めたのはいつぐらい?」
微かに「え?」という疑問とも驚きともとれる声が聞こえた。僕も正直驚いた。男子に対する質問とは少し質が違う気がした。僕の時は、最近の健康状態とか食事がどうとかしか訊かれなかった。もちろん、男子はおっぱいが膨らむなんてことは基本的に無いから、そんな質問をされるはずもないんだけど。
「───くらい・・・です」
南さんの声が聞こえたけど、肝心の部分は聞こえなかった。南さんのおっぱいが、他の女子───もちろん、前の学校の───と比べて大きいのか小さいのかはわからないけど、形も大きさも僕の好みで、兄の部屋で盗み見た雑誌の写真なんかよりよっぽど興奮した。そのおっぱいが、いつ頃膨らみ始めたのか。もっと大きな声で答えてくれればいいのに───
「ちゃんと言いなさい。矢野先生に訊かれたら、大きな声でハッキリ答えなさいって言ったでしょう」
矢野先生が、ちらりと藤沢先生を見た。藤沢先生が首を振る。
「南さん、ちゃんと言ってくれないと藤沢先生が記録できないわ。さ、もう一度大きな声で」
「小学校の・・・5年生くらい」
小学校5年生ということは、僕と同じく早生まれの南さんは10歳で胸が膨らみ始めたってことだ。今で3年ちょっと。たったそれだけの期間であんな風になるんだ。
「じゃあ、ヘアーが生え始めたのはいつ頃?」
僕は、さっき目に焼き付けた南さんの薄い恥毛を思い出した。今は太腿の上に手が置かれてるし、横からのアングルなので直接それを見ることはできない。
「・・・6年生くらいです」
いつの間にか、保健室の中は静まり返っていた。男子全員が、矢野先生の質問と南さんの答えを聞き逃すまいと集中していたからだ。
「もう生理は来てるのかしら」
南さんがビクッとしたのを僕は見逃さなかった。太腿に置いた右手を微かに握り直してから、少しだけコクンと頷いた。
「初めて来たのはいつぐらい?」
生理って言葉は知ってるけど、詳しいことはあまり知らない。月イチくらいで女子のアソコから血が出るらしいってことくらいは何となく知ってるけど。保健体育や性教育の授業で習いはしたけど、図やグラフを見てもあまりイメージは湧かなかった。
「去年です・・・」
蚊の鳴くような声だった。
「ちゃんと言ってくれないと聞こえないわ。初潮は中学1年生の時でいいのね?」
藤沢先生が大きな声で確認すると、南さんは小さくなってコクリと頷いた。せっかく男子に聞こえないように小さな声で答えたのに、あれだけ大きな声で確認されたらどうしようもない。
「月経周期はどれくらい?あ、月経周期ってわかるかしら?生理がどれくらいの間隔で来るかってことよ」
月経周期の意味くらいは説明されなくても想像はついた。南さんは女の子だし、真面目で頭もいいからもちろん知っているだろう。でも、わざわざどれくらいで生理が来るかなんて覚えているんだろうかと僕は思った。
「35、6日くらいです・・・」
僕の予想を裏切って、南さんは自分の月経周期をちゃんと知っていた。アソコから血が出るってんだから、いつ頃そうなるか把握しておくのは当たり前なのかもしれない。僕ら男子はそんなこと考えたことも無い。
「ふ~ん・・・まだ初潮直後だから、少し間隔が長いのかもしれないわね」
矢野先生は、言いながら藤沢先生のノートに視線を移す。そして藤沢先生に「ここも書いて」とでも言うかのようにノートを指した。
「最後に生理が来たのはいつ?」
しばらくの沈黙があった。時が止まったような気がした。男子は、喋るのはおろか、息をするのさえはばかられるかのように全く物音を立てなかった。カシャンと時計の長針が動いた。
「恥ずかしいことじゃないのよ。みんな経験してることなんだから」
矢野先生はそう言ったけど、この状況でその言葉を額面通り受け取れるかどうかは疑問が残るところだった。その質問に答えるってことは、アソコから血が出た日を19人の男子に公表するってことだ。今保健室には3人の女子が居るけど、その中で生徒は南さん1人だけ。一歩保健室を出れば、1人だけ恥ずかしい秘密を知られてしまった女子と、秘密を知った19人の男子という構図が出来上がってしまう。
「3月の・・・10日くらいです・・・」
「ぴったり10日?」
「・・・はい」
「そう・・・じゃあ次の生理は、今月の13日か14日くらいかしら」
南さんは赤い顔をさらに真っ赤にして俯いた。今日が7日だから、あと6日か7日くらいだ。てことは来週南さんは生理中ってことになる。他にも同じ事を考えた奴が居たのか、誰かがヒソヒソと話すのが聞こえた。
「生理の時、お腹が痛くなったりする?」
生理痛ってやつだと僕は思った。よくはわからないけど、生理の時お腹が痛くなったりするらしい。男子には生理ってものが無いから、どれくらい痛いのかはサッパリ解らなかった。
「2日目くらいに・・・痛くて・・・」
またしばらくの沈黙があった後、南さんが答えた。ということは、来週前半のどこかで南さんは生理痛に苦しんでいるってことになる。僕はまた頭の中で計算した。